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1986年 パークスビル

<Parksville>

100マイルハウスでの生活が3ヶ月を過ぎようとした頃、次の場所へ移動することになりました。パークスビルParksvilleはバンクーバーから海を挟んだバンクーバー島Vancouver Islandの中央部に位置しています。

バンクーバーからバンクーバー島の主な移動手段はフェリーで、当時は2つのメインルートがあり、それぞれ1-2時間おきに出港してました。一つはバンクーバーの北、ウエストバンクーバーWest VancouverにあるホーシューベイHorshoe Bayからパークスビルの少し南にあるナナイモNanaimoにあるデパーチャーベイDeparture Bayまでの路線。ホーシュー(馬の靴)とはその名の通り馬などの足につける蹄鉄のことで、湾が馬蹄形をしていることからその名が付いたそうです。ホーシューベイまではバンクーバーのダウンタウンからはトランスカナダハイウエイTrans-Canada Highway(カナダを横断する幹線道路で、いくつかに枝分かれしています。)を通って2~30分。フェリーの所要時間は1時間40分。

もう一つはバンクーバーの南、トワッセンTsawwassenからバンクーバー島の南端にあるブリティッシュコロンビア州の州都、ビクトリアVictoriaへの玄関口、スオーツベイSwartz Bayまでのルートです。トワッセンまではバンクーバーのダウンタウンからは約30分。フェリーの所要時間は1時間35分。スオーツベイからビクトリアまでは車で20分ほどです。現在はトワッセンとナナイモのルートも出来ました。

どちらのルートもフェリーの所要時間とダウンタウンから港までの30分を足して2時間と少し、プラス待ち時間です。繁忙期には2時間前から待つことも珍しくありません。バンクーバーのダウンタウンとビクトリア間は水上飛行機Float Planeが定時運行していて、片道30分ほどで行くことが出来ますが、多くの人はフェリーを利用します。バンクーバーのダウンタウンとビクトリアはその後12人乗りのヘリコプターの定期便も飛ぶようになり私も仕事で良く利用しました。

パークスビル ビーチ

当時のパークスビルと1つ北にあるクオリカムビーチQualicum Beachのあたりはのんびりとした田舎のビーチリゾートでした。ここではピーターPeterというカスタムメイドのキッチンを作るアメリカ人の家の1部屋を借りました。1階は作業場、生活空間は2階で、ベッドルームが2つ、ダイニングキッチン、シャワー室という間取りでした。一番最初に教わったのはトイレの使い方でした。トイレは外にある小屋で、便器の横にはおがくずをいれたバケツと灰を入れたバケツがあり、用(大)を足すとまずは灰、そのうえにおがくずをかけるという決まりでした。使ってみると匂いも残らず意外と快適でした。

ピーターは戦争に反対していたヒッピーで、徴兵を逃れてカナダに来たそうです。とても穏やかでお酒好きの好人物でした。この頃には私の英語能力も大分上がって、ある程度の日常会話はこなせるようになっていたので、毎晩飲みながら色々な話をしました。彼は色々なことに興味があり、ときには一緒に和食を作って日本酒をかたむけることもありました。彼の住んでいたあたりは一種のコミュニティのようなもので、それぞれの家に通じる道は有るのですが、バックヤードはフェンスが無く住人は勝手に行き来していました。

そんな中にピーターの昔のガールフレンドのダイアンDianというとても親切な人がいました。家でお茶をごちそうしてくれたり、私が現場に持っていくランチを作ってくれたり、時々食べるものを持参してわれわれの夕食に参加したりしてました。もう恋人ではないけれど、ピーターといると落ち着くので友人として付き合っていると言っていました。

ここでのログハウスのビルダーはマイルスMilesという少し変わった男でした。ある日彼の家に行くと、大型の犬が出迎えてくれました。その犬は警戒心が強く初めての人に吠えなかったのは珍しいと後で言われました。マイルスが使用していたのは、ウエスタンレッドシダーWestern Red Ceder、日本ではベイスギと呼ばれる木で、スプルースに比べると色が濃のが特徴です。彼は職人肌というのか人を使うのが好きでは無いようで、ほとんどの作業を一人でこなしていました。私も100マイルハウスのときとは勝手が違い、あまりすることがなかったので、余った時間は道路沿いのカフェでコーヒーを飲みながら海を眺めたり、行く先を決めずにドライブしたり、バーベキューに招かれたりと、それなりにここでの生活を楽しんでいました。2ヶ月ほどすると、母が日本から来るということで、バンクーバーに戻ることになりました。